講義情報
タイトル
研究施設 低温科学研究所について
概要
低温科学研究所は「寒冷圏および低温環境における自然現象の基礎と応用の研究」を目的とする、文部科学省認定の共同利用・協同研究拠点として、国内外の研究機関と連携したプロジェクト等を推進しています。
低温科学研究所所長 若土教授へのインタビュー(2006)
「低温科学研究所について」
低温科学研究所所長 若土 正曉
[右:若土教授、左:インタビュアー・櫻井氏] (2006/3/31)
・低温科学研究所とは?
歴史的なことで申し上げますと、中谷宇吉郎先生が世界で初めて雪の結晶を人工的に作る事に成功なさったことが切っ掛けで設立された研究所です。中谷先生が「雪の結晶は天からの手紙である」とおっしゃられたように、雪の結晶にも様々な形があり、それらを詳しく調べることによって、上空の気象などが理解できると考えられます。このような世界に誇れる研究を継続的に進める拠点となるべく、昭和16年に北海道大学で最初の附置研究所として設立されました。 当初は、地球上に存在する様々な形態の雪や氷の研究、あるいは寒冷地で生息する生物の研究などを行っていました。そういった研究が、日本国内だけではなく、国際的にも認めれらるようになりました。その後、平成7年には、国内外の研究者への門戸を開くため、全国共同利用研究所として生まれ変わりました。その際に、寒冷圏の地球環境の研究を行うことになり、まず、オホーツク海についての研究が始まりました。
・オホーツク海の研究とは?
オホーツク海で特徴的なのは、冬に、世界で最も低緯度まで海氷が存在する場所であることです。オホーツク海は北海道に面していることもあって、こういった流氷がどのように作られ、運ばれてくるのかについて、素朴な疑問が存在していました。しかし、旧ソ連とは経済水域の問題があったため、研究が進んでいませんでした。ところが、その後のロシアでは、ロシアの船での調査が可能となりましたので、日米露の共同研究で集中的に調査を行い、多くの事がわかりました。
・他の研究については?
環オホーツク観測研究センターが設立され、オホーツク海だけではなく、オホーツク海を取り巻く、ユーラシア大陸、太平洋、北極圏を含む環オホーツク圏の研究を行っています。 また、惑星科学についての研究にも取り組んでおり、木星や土星に存在する氷がどのように生成されたのかを調べています。惑星の環境を再現するような装置を実験室に作成し、惑星の進化にせまるような研究が行われています。 さらに、低温科学研究所から毎年のように人員を送っている南極での調査があります。南極の氷床コアを解析し、数十万年前から現在にいたるまでの地球環境の変遷を調べる研究が行われています。 このような研究の他にも、気象学、地球化学、雪氷学、植物生態学、動物生態学などについての研究が行われています。
・今後の計画は?
最も重要なことは、看板になるようなプロジェクト研究だけではなく、昔から続いている基礎的研究を、平行させて行うことだと考えています。特に、大学の研究所でしかできないような長期的展望に立った研究を行うことが重要だと思います。
・学生へ期待することは?
私自身、北海道大学に憧れて入学しましたが、夢を持って歩んでほしいと思います。大学時代は基礎を大切にして、後の研究では、世界で初めて明らかにするという気概を持って取り組んでほしいと考えています。
<関連情報>
講義
・Dynamics of Ice sheets and Glaciers
リンク
・国際南極大学
・北海道大学低温科学研究所
<年表>
昭和 16年 11月 低温科学研究所設置
物理学部門、応用物理学部門、気象学部門、 海洋学部門、生物学部門、医学部門設置
昭和 38年 4月 雪害科学部門増設
昭和 39年 4月 凍上学部門増設
昭和 40年 4月 附属流氷研究施設設置(紋別市)
昭和 40年 11月 雪崩観測室新築(幌延町問寒別)
昭和 41年 3月 附属流氷研究施設庁舎(449m?)新築
昭和 41年 4月 植物凍害科学部門増設
昭和 43年 3月 研究棟(2,892m?)新築
昭和 43年 11月 低温棟(2,342m?)新築
昭和 45年 4月 融雪科学部門増設
昭和 46年 10月 附属流氷研究施設庁舎(183m?)増築
昭和 47年 11月 凍上観測室新築(苫小牧市)
昭和 48年 4月 低温生化学部門増設
昭和 50年 12月 研究棟(1,065m?)増築
昭和 53年 2月 附属流氷研究施設宿泊棟(338m?)新築
昭和 53年 10月 融雪観測室新築(幌加内町母子里)
昭和 54年 4月 医学部門を生理学部門に転換
生物学部門を動物学部門に、低温生化学部門を生化学部門に名称変更
昭和 56年 4月 降雪物理学部門増設
平成 3年 4月 降雪物理学部門廃止、雪氷気候物理学部門増設
平成 7年 4月 全国共同利用の研究所に改組
寒冷海洋圏科学部門、寒冷陸域科学部門、 低温基礎科学部門、寒冷圏総合科学部門 の4大部門を設置
平成 9年 3月 分析棟(1,622m?)増築
平成 12年 3月 研究棟新館(2,441m?)増築
平成 15年 12月 実験棟(旧低温棟)改修
平成 16年 4月 附属流氷研究施設(紋別)を廃止・転換し、環オホーツク観測研究センター設置(札幌)
平成 16年 10月 凍上観測室(苫小牧市)を森林生態系観測室に変更
平成 20年 3月 研究棟改修
平成 20年 10月 組織改編
共同研究推進部を設置し、研究部門を4大部門から3大部門(水・物質循環部門、雪氷新領域部門、生物環境部門)に変更
平成 22年 4月 共同利用・共同研究拠点に認定される
平成 22年 9月 雪崩観測室廃止(幌延町問寒別)
平成 24年 7月 森林生態系観測室を北方生物圏フィールド科学センターへ移管(苫小牧市)
平成 25年 9月 環オホーツク観測研究センター改組
国際連携研究推進室を設置し、研究分野を3分野から2分野 (気候変動影響評価分野、流域圏システム分野)に変更
低温科学研究所所長 若土教授へのインタビュー(2006)
「低温科学研究所について」
低温科学研究所所長 若土 正曉
[右:若土教授、左:インタビュアー・櫻井氏] (2006/3/31)
・低温科学研究所とは?
歴史的なことで申し上げますと、中谷宇吉郎先生が世界で初めて雪の結晶を人工的に作る事に成功なさったことが切っ掛けで設立された研究所です。中谷先生が「雪の結晶は天からの手紙である」とおっしゃられたように、雪の結晶にも様々な形があり、それらを詳しく調べることによって、上空の気象などが理解できると考えられます。このような世界に誇れる研究を継続的に進める拠点となるべく、昭和16年に北海道大学で最初の附置研究所として設立されました。 当初は、地球上に存在する様々な形態の雪や氷の研究、あるいは寒冷地で生息する生物の研究などを行っていました。そういった研究が、日本国内だけではなく、国際的にも認めれらるようになりました。その後、平成7年には、国内外の研究者への門戸を開くため、全国共同利用研究所として生まれ変わりました。その際に、寒冷圏の地球環境の研究を行うことになり、まず、オホーツク海についての研究が始まりました。
・オホーツク海の研究とは?
オホーツク海で特徴的なのは、冬に、世界で最も低緯度まで海氷が存在する場所であることです。オホーツク海は北海道に面していることもあって、こういった流氷がどのように作られ、運ばれてくるのかについて、素朴な疑問が存在していました。しかし、旧ソ連とは経済水域の問題があったため、研究が進んでいませんでした。ところが、その後のロシアでは、ロシアの船での調査が可能となりましたので、日米露の共同研究で集中的に調査を行い、多くの事がわかりました。
・他の研究については?
環オホーツク観測研究センターが設立され、オホーツク海だけではなく、オホーツク海を取り巻く、ユーラシア大陸、太平洋、北極圏を含む環オホーツク圏の研究を行っています。 また、惑星科学についての研究にも取り組んでおり、木星や土星に存在する氷がどのように生成されたのかを調べています。惑星の環境を再現するような装置を実験室に作成し、惑星の進化にせまるような研究が行われています。 さらに、低温科学研究所から毎年のように人員を送っている南極での調査があります。南極の氷床コアを解析し、数十万年前から現在にいたるまでの地球環境の変遷を調べる研究が行われています。 このような研究の他にも、気象学、地球化学、雪氷学、植物生態学、動物生態学などについての研究が行われています。
・今後の計画は?
最も重要なことは、看板になるようなプロジェクト研究だけではなく、昔から続いている基礎的研究を、平行させて行うことだと考えています。特に、大学の研究所でしかできないような長期的展望に立った研究を行うことが重要だと思います。
・学生へ期待することは?
私自身、北海道大学に憧れて入学しましたが、夢を持って歩んでほしいと思います。大学時代は基礎を大切にして、後の研究では、世界で初めて明らかにするという気概を持って取り組んでほしいと考えています。
<関連情報>
講義
・Dynamics of Ice sheets and Glaciers
リンク
・国際南極大学
・北海道大学低温科学研究所
<年表>
昭和 16年 11月 低温科学研究所設置
物理学部門、応用物理学部門、気象学部門、 海洋学部門、生物学部門、医学部門設置
昭和 38年 4月 雪害科学部門増設
昭和 39年 4月 凍上学部門増設
昭和 40年 4月 附属流氷研究施設設置(紋別市)
昭和 40年 11月 雪崩観測室新築(幌延町問寒別)
昭和 41年 3月 附属流氷研究施設庁舎(449m?)新築
昭和 41年 4月 植物凍害科学部門増設
昭和 43年 3月 研究棟(2,892m?)新築
昭和 43年 11月 低温棟(2,342m?)新築
昭和 45年 4月 融雪科学部門増設
昭和 46年 10月 附属流氷研究施設庁舎(183m?)増築
昭和 47年 11月 凍上観測室新築(苫小牧市)
昭和 48年 4月 低温生化学部門増設
昭和 50年 12月 研究棟(1,065m?)増築
昭和 53年 2月 附属流氷研究施設宿泊棟(338m?)新築
昭和 53年 10月 融雪観測室新築(幌加内町母子里)
昭和 54年 4月 医学部門を生理学部門に転換
生物学部門を動物学部門に、低温生化学部門を生化学部門に名称変更
昭和 56年 4月 降雪物理学部門増設
平成 3年 4月 降雪物理学部門廃止、雪氷気候物理学部門増設
平成 7年 4月 全国共同利用の研究所に改組
寒冷海洋圏科学部門、寒冷陸域科学部門、 低温基礎科学部門、寒冷圏総合科学部門 の4大部門を設置
平成 9年 3月 分析棟(1,622m?)増築
平成 12年 3月 研究棟新館(2,441m?)増築
平成 15年 12月 実験棟(旧低温棟)改修
平成 16年 4月 附属流氷研究施設(紋別)を廃止・転換し、環オホーツク観測研究センター設置(札幌)
平成 16年 10月 凍上観測室(苫小牧市)を森林生態系観測室に変更
平成 20年 3月 研究棟改修
平成 20年 10月 組織改編
共同研究推進部を設置し、研究部門を4大部門から3大部門(水・物質循環部門、雪氷新領域部門、生物環境部門)に変更
平成 22年 4月 共同利用・共同研究拠点に認定される
平成 22年 9月 雪崩観測室廃止(幌延町問寒別)
平成 24年 7月 森林生態系観測室を北方生物圏フィールド科学センターへ移管(苫小牧市)
平成 25年 9月 環オホーツク観測研究センター改組
国際連携研究推進室を設置し、研究分野を3分野から2分野 (気候変動影響評価分野、流域圏システム分野)に変更
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